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「さて、茜が何か思い出すまで、どこに行く?」
ハンバーガーショップから出ると、俺たちは再び自転車に跨った。
荷台に茜を乗せた俺は、
「そうだな……」
と考え込む。
「ゆっくり出来るところがいいな」
「んじゃ、カラオケにでも行くか!」
「いい案だ」
「からおけ?」
俺たちの会話を聞いていた茜が小首を傾げたので、
「まさか茜ちゃん、カラオケも行ったことないの!?」
涼介が目を丸くした。
「からおけというものがどういうものなのか、分かりません」
茜の言葉に、
「へええ……」
涼介がもはや、感心しているのか呆れているのか分からない様子で吐息した。
「歌を歌うところなんだけど……茜は行ったことがないんだ?」
「はい」
今時、ハンバーガーショップもカラオケも知らないだなんて、一体、この子はどこの深窓の令嬢なのだろうか。
「なら、初体験だ。行こう」
俺は茜に笑いかけると、ペダルを踏んだ。
*
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