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第二章 「誘拐犯との激闘」
男は猛スピードで車を運転しながら、目的の場所である3階建ての廃病院に向かっていた。後部座席にはバーバラが乗せられている。
10分後、車は廃病院の前に停まった。男は彼女を乱暴に車から降ろし、
階段を上がって最上階に向かった。アダムは素早く車の陰から抜け出すと、音を立てないようにして彼らの後についていった。
男はバーバラをロープでベランダの手すりに縛り付け、ズボンのポケットから銃を出して彼女に向けた。
その時、白い閃光弾が猛スピードで男に向かって飛んできて、しりもちを
つかせた。バーバラは驚いて後ろを振り返る。そこにはコートを着て杖を構えたアダムが立っていた。
男は激高し、「You bastard!」と叫びながら走ってきた。アダムは冷静に
それをかわして自分の杖で男の攻撃を防いだ。それはしなやかで、何度も伸びたり縮んだりしている。今まで知らなかった幼なじみの一面を見て、バーバラの心にあたたかい気持ちがわいてきた。
不意に男がアダムに向かって銃を撃った。発射された弾が彼の肩を貫き、あたりに鮮血が飛び散った。杖がアダムの手から落ち、バーバラのほうに転がってきた。アダムはよろよろと立ちあがりながらそれをつかみ、彼女に向けて
振る。あたたかいオレンジ色の光がバーバラの体を包んで温めた。
なおも二人に向かっていこうとする男だったが、サイレンの音に驚いて外に
飛び降り、そのまま警察に取り押さえられた。
アダムはゆっくりとバーバラに近づいてさるぐつわを外し、そっと抱きしめる。「バーバラ。無事でよかった」彼の声にはほっとした気持ちがこもっていた。バーバラも満面の笑みを浮かべて「ありがとう」と返す。
「怖かったけど、あなたが来てくれてほっとできた」と言う彼女に、「小さいころからの付き合いだからな。他の人間は嫌いだけど、お前とジェーン、それから尺八は信じられる」と照れながら返す。アダムはバーバラの肩をつかんで引き寄せ、彼女の唇に自分の唇を重ねた。バーバラに対する好意を自覚しながら彼女とともにホテルに戻り、パジャマに着替えて自分たちの部屋のベッドにそれぞれ横になった。
「旅の初日からびっくりすることが多いよな。お前が連れて行かれた時は
背筋が冷えたけど」とアダムが小声で言うと、「うん。でもおいしいパンケーキやトマトスープが味わえるお店が見つかったりするのが楽しい」と笑いながら返される。「旅の魅力だよな」とうなずいてから「グーテン ナハト」と
声をかける。「グーテン ナハト」という彼女の返事を聞いてから目を閉じ、
そのまま朝六時まで熟睡した。
翌朝、バーバラを連れ去った男が警察に逮捕されたという記事が朝刊に載った。
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