窓辺の悪魔

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「……」 「都合が悪くなるとダンマリかよ……ケッ、やっぱりオレは君が大ッ嫌いだ!」 詰っても罵倒しても言い訳おろか、何ひとつ言葉を返さない。 それが無視されているような気分になって尚更腹が立つ。 「もうオレを解放しろ」 「……駄目だ」 「ここだけ喋るのかよっ! またあの女に狙われるからか!? オレなんかどこでどうくたばっても君には関係ないだろうが」 これ以上。訳わかんないこいつを見たくない。 あの思い出を、オレのなけなしの宝物を汚さないでくれよ……。 祈る気持ちで叫ぶが、きっとこの気持ちも届かないのだろう。 「俺はお前を離すわけにはいかない。今度こそ、な」 「何訳わかんないことを……!」 ちゃんと説明しろと詰め寄るが、彼は黙って首を振るだけだ。 そしてサイドテーブルに果物を盛った皿を置いて立ち上がる。 部屋を出ていくらしい。 「君は……また、オレから逃げるんだな」 恨めしさと悔しさが滲んでいたと思う。 現に言葉の後に唇を噛み締めると、ほんの少し血の味がする。 「フィン。お前は知らなく良い」 しかしこの狼男はそれだけ言うと、分厚い扉を開ける。 むけられた背に思い切り果物を掴み投げつけるが、彼は遂に振り向かなかった。
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