魔女の悪魔の事情

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■□▪▫■□▫▪■□▪ 「結局傷を治して記憶を封じてやったわけですか」 「そ。私、子供好きなのよねぇ」 「人狼、の……でしょ」 「うふふ、ご名答」 昔話しながら、自宅に招いたローガンのカップに紅茶のお代わりを注いでやる。 軽く頭を下げティーカップを持つ、彼の仕草はとても優雅だ。 「アマリアは対価に釣られすぎですよ」 「そうかしらねぇ……そうそう。このあとも何かと助けてやったのよ?」 レミーは、再び私の元に来て言い放ったわ。 『彼を俺の妻にしたい』と。 「……なんですか、それ」 苦々しい顔をして、ローガンが呟いた。 別に紅茶が苦かった訳じゃあない。単純に、それだけ頭おかしい依頼だったという事ね。 「幼馴染で初恋相手と結婚したい、なんて可愛いじゃないのよ」 「でも、それがフィンなんでしょ。魔法や呪いで何とかできる範疇じゃない」 そう確かにね。 だけど助言だけならできるでしょう……人生の先輩として。 それに彼はあの人狼の王子様よ? ものすごいコネクションになるじゃないの。 「ちゃんと言ってやったわ『一人前の男になって、彼を迎えに行きなさい』……もちろん根回しと交渉の術も授けたしね」 「時間外労働じゃないですか」 「そ。ブラック企業なのよ? 悪魔って」 「うげぇ」 クッキー摘みほおばりながら、彼は肩をすくめる。 「その甲斐あって、着実に外堀は埋めてるみたいだわ……ほんと、優秀な生徒だった」 今は少し反抗期だけどねぇ。昔はあんなに可愛かったんだけど、残念だわ。 私は紅茶にジャムを入れてかき混ぜる。立ち上る果物の瑞々しい甘い香りが鼻腔をくすぐり、それだけで気分が良くなるというものね。 「あとはあの吸血鬼のお姫様が観念することね」 恐らくレミーの執着から逃げることは出来ないわ。 なんせ。 「『自分を選ばないのなら、二人で死ねば良い』なんて真顔で言い切った男よ?」 「うわぁ……じゃ、あの短剣も」 またまたご名答。 どこからあんなタチの悪い魔具探してきたのやら。 「でもあれでしょ。いくらなんでも結婚までは……」 ふふ、彼の言う通り。 由緒正しいお家にありふれる『お世継ぎ問題』 「ゲッ、まさか……」 少年悪魔が浮かべたのは、好奇というより嫌悪の入り交じった表情。つまりめっちゃ引いてる。 「子宮って、作れるのねぇ」 私のこの言葉に口の端をヒクつかせる美少年が面白過ぎて、私は紅茶を吹き出さないでいるのがやっとだった。
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