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06
キャネックを引き渡すため、ガロルドはキャリー・ワネットの邸宅に再び訪れた。
「おお、わたしのかわいこちゃん。帰ってこないから心配したよ」
ガロルドの手を離れて部屋を歩き始めたキャネックを、キャリーは普段からは考えられないデレデレとした表情で出迎えた。しかしキャネックは彼女を無視して、すたすたと別の部屋へ行ってしまう。まったく、そっけない。それにも関わらず、キャリーは優雅に歩くキャネックの姿をうっとりと眺めていた。
それからキャリーは、とつぜんガロルドのほうに振り向いた。
そのときにはもう、いつもの不機嫌そうな表情に戻っていた。
「よくやってくれたね、ガロルド。やっぱりおまえに頼んでよかったよ」
「どうも」
「何かあったのかい?」ガロルドの暗い顔を見てキャリーは訊ねた。
「いえ、少し疲れただけです」
「ふん。でかい図体して弱音を吐くんじゃないよ。なんなら滋養強壮がつく食事でも食べさせてやろうか。わたしゃいい店を知っているんだ」
「えっと、またの機会に……。今日はもう帰ります」
「あっそ。報酬はいつも通り後日、請求しておくれ。ご苦労様」
「はい」
ガロルドはキャリー・ワネットの邸宅をあとにし、来たときと同じように自分の家へと向かった。モノレールを使って最寄りの駅で降り、街灯に照らされたゴルゼムの道をアパートに向けて歩く。
あたりはすっかり、暗くなっていた。
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