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 燃え上がる大地。  赤く染まる夜空。  男の腕が、剣を持つ人間の胸を貫いた。  血を吐き出した人間は、男が腕を引き抜くと力なく大地に倒れる。  それが始まりの合図だった。  男は、次々と人間を襲った。  全身に鎧をまとった人間は、後ろから抱きかかえて蒸し焼きにした。  銃を構えた人間は、足を焼いて動けなくしてから頭を叩き潰した。  杖を掲げ魔法を使おうとした人間は、頭をわしづかみにして持ち上げ、そのまま手のひらの熱で焼き殺した。  四人の人間を殺し終えると、立っている命は男だけになった。  男は、真っ赤に燃える自分の手のひらを見つめた。  気がつくと男の周囲は、人間の死体で埋め尽くされていた。  見つめていた手を下ろし、男はゆっくりと歩き始める。  その歩みはやがて駆け足になり、すぐに全力疾走に変わった。  まるでここから逃げ出したいかのような、必死の形相だった。  しかし大地はどこまでも死体で埋まっている。  人間だったものを踏みつけて、そのたびに感じる肉の感触。  むせ返るような血と焼けたにおい。  走っても走っても、眼差しは消えない。  やがて男は、悲痛な叫び声を上げた。
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