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 ガロルドは、跳ねるようにして目を覚ました。  呼吸は荒く、全身から汗が噴き出している。  慌ててあたりを見回して、ここが自分の部屋だとわかると、ガロルドはやっと呼吸を整えることができた。長く息を吐いて自分を落ち着かせると、うめくように彼は言った。 「また、あの夢か」  打ちのめされたように額に手を当てて、ガロルドはうつむいた。だがずっとこうしているわけにもいかない。やがて彼はベッドから出た。  汗を流すために浴室に向かったガロルドは、脱衣所で上半身だけ服を脱ぎ、ふと鏡を見た。  ガロルドの頭の左右には一本ずつツノが生えている。目は黒く、瞳の色は赤い。体は鍛えられていてたくましく、身長も平均的な人間よりもずっと高かった。  ガロルドは人間ではなく、魔族だ。  頭にツノが生えていることと人間で言う白目の部分が黒いこと、それに体が比較的大きいことが、人間と魔族の違いだ。逆に言うとそれ以外は人間と変わらない。髪や肌や瞳の色などの特徴は種族に関係なく「人それぞれ」だ。魔族の場合は、ツノの生える位置や形、それに本数にも個性があるが、それは親からの遺伝によるものが大きいと言われている。  ガロルドの体には大小様々な傷の跡が無数にあった。鍛え抜かれた体といい、歴戦の戦士といった風貌だ。しかし、いまのガロルドの表情は暗く、弱々しい。悪い夢の余韻から、まだ抜け切れていなかった。  ガロルドは服をすべて脱ぐと浴室に入り、シャワーを浴びた。  まるで夢の記憶を洗い流すかのような、熱いシャワーだった。
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