彼女たちのなっがいプロローグ

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 家に帰れば俯いて小走りで自室に入り、ドアを背に顔を上げ、 「あんな言い方せんでもええやんけ……! 田所の野郎……!」    クリーム色の壁に目を剥きながら睨みをきかし、歯ぎしりとともに恨み言を呟く器が小さい女、吉沢。 「ハゲろ! おでこと後頭部から徐々にハゲろ」    「このハゲ―!」と肩にかけていた鞄をフローリングの床に投げ捨てる。  鞄の開け閉めをするプラスティックのバックルが、床に当たり痛々しい音が部屋に響いた。 「どうせ六畳一間でやっすいボロアパートにすんでんだろアイツ! 金に困って道端で配っているティッシュ揚げて食ってるくせによお!」    部屋の中心で恐ろしいほど根も葉もないことを叫ぶ吉沢。    不意にドアが開く。 「今の音なに? 何したあんた。何してんのあんた」    吉村の母だった。 「いや、別に。……鞄置いただけだけど」    床に無造作に置かれた鞄を見た吉沢の母は、声色が上ずり豹変する。 「あんたまさか、鞄投げたの? フローリングが傷つくからあれだけ優しく置いてねって言ったでしょうが! 下のその……丸い……固い……プラスティックのバランスとるやつが当たるからやめてねっていったでしょうが!」 「当たってませんから〜! 鞄を閉じるカチカチするやつしかあったてませんから〜! てかノックぐらいしてって、いつもいってんじゃん!」 「結局当たらしてるじゃないの」  恥ずかしスギル! 母に見られた……!    これも全部田所の所為。  吉沢はさらにムカムカした。
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