第三章 深夜バス 三

1/20
275人が本棚に入れています
本棚に追加
/432ページ

第三章 深夜バス 三

 この製作品は、浴槽の中で作られていて、浴槽の周辺に集中的に血がこびりついていた。電動のこぎりや、ドリルなどの工作機器もそのままになっていて、ここで殺して製作していた可能性が高い。 「殺人事件になった。この現場は、警察に任せるしかないのか……」  虎牙だとすると、深夜バスに宣伝していたように、犯行場所を隠してはいなかった。死体が無いという理由だけで、銭湯の捜査をしていなかった、警察の怠慢だろう。 「警察は怠慢だな……」 「ここに警察が二人ほど来ていますがね……夏目さん」  和泉もタイルに描かれた、富士山の辺りを気にしていた。近衛は淡々と写真を撮ると、遺体を検分している。冷静に分析する近衛と、勘で動く和泉とで、案外、バランスはいいのかもしれない。 「虎牙は、身長が百八十……そして、がっしりとした体躯を持っています」  すると、虎牙の恋人は、身長が二メートルくらいある。 「和泉刑事、いくら何でも、警察はここを調べていたでしょう?その時の画像はないのですか?」  犯罪なのか分からなくても、深夜バスが有名になってくれば、通報もあっただろう。
/432ページ

最初のコメントを投稿しよう!