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いない。
朝、目覚めると、隣に寝ているはずの慶がいなかった。
「出て行っちゃったのかな」
彼なら出て行く前に、ありがとう、と言いそうなものだが。
寝室から出てリビングへ入った秀一は、驚いた。
散らかり放題だった部屋が、小綺麗に片付いているのだ。
「これは一体」
物音が、キッチンから聞こえる。
入ってみると、そこには慶がゴミ袋片手に笑っていた。
「おはよう!」
「お、おはようございます」
「いや、勝手に申し訳なかったけどね。一宿一飯のお礼」
慶の持つゴミ袋には、キッチンに山のように重なっていた弁当のパックやら、カップ麺の空き容器やらが詰まっている。
「すみません……」
だらしない奴だ、と思われたかな。
そんな思いがよぎったが、仕方がない。
病気の今は、何もやる気が起きないのだ。
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