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「吸血鬼と言っても、色々いてね。太陽の元でも平気な、俺のような奴もいる。血を吸わなくても、人間の食べ物で生きていくことができる者も、ね」
俺は、そういう吸血の一族に生まれた、と慶は語った。
「時には、人間の血も吸うよ。元気の有り余ってるようなヒトから、ちょっとだけ」
血を吸われた人間は、しばらくは生気を失うが、やがてまた元通りになる。
そうやって、慶の一族はヒトと共存してきた。
「秀一くんに、そんな俺の一族に加わって欲しい」
信じられない、といった眼をしていた秀一だったが、いつまでたっても慶が笑いだす気配がないので、かすれた声を押し出した。
「僕が、吸血鬼に?」
「そう。そして……」
係長の血を、思いきりいただいてやるといい。
しばらく、いや長期間生気を失うほど、たっぷり喰らってやるといい。
慶は、そこでようやく微笑んだ。
初めて彼の見せる、艶然とした微笑みだった。
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