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犬歯でがぶりとやられるのかと思っていたが、慶は秀一の肌に歯を当てただけだった。
ぷつ、と針で刺すか刺さないか、くらいの刺激。
ただ、自分の首筋から血液が吸い出されていく感覚は、確かにあった。
ぞくり、と来た。
しかし、それはものの数秒で終わった。
ゆっくりと離れた慶は、満足げな顔つきをしていた。
「秀一くんの血は、極上だったよ」
ふ、と気の緩んだ秀一に、慶は声をかけた。
「まだ、半分だよ。今度は、秀一くん。君が俺の血を吸うんだ」
「慶さんの血を!?」
「俺がしたように、やってみて」
恐る恐る、秀一は慶の首筋に顔を近づけた。
ホントに、僕は吸血の一族に、慶さんの仲間になったんだろうか。
慶の首筋に、歯を当てた。
途端に、自分の歯という歯から、何かが伸びだしてくる感覚が。
注射器の針より、髪の毛より細い、だが鋭い管が慶の首筋に深く刺さってゆく。
それと同時に、甘い味が口いっぱいに広がった。
秀一は、恍惚に身を震わせた。
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