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「大体ね! 鬱病なんか気合だよ。気合で治すもんだよ!」
赤ら顔の係長が、酒臭い息を吐いて絡んでくる。
秀一は、一刻も早くこの場を葬りたかったが、まだ早い。
機が熟するのを、待つ。
そして、待つのは苦痛ではなかった。
秀一は、慶と同じ吸血の人外者となったのだ。
精神も肉体も、以前と比べて格段に強くなっていた。
「私が若い頃なんか、鬱なんて病気なかったんだから。若者の甘えだよ、甘え!」
各界から猛然と抗議の声が上がりそうな毒を、ぽんぽんと吐いてくる係長。
秀一はそれを苦々しく思いながらも、彼のグラスをせっせと作った。
「係長、おかわりです」
「うん」
係長は、ありがとう、と決して言わない人だ。
慶さんとは、真逆の人間なんだ、と秀一は改めて噛みしめた。
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