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男は、近藤 慶(こんどう けい)と名乗った。
自宅への帰り道、自転車を押しながら、慶は身の上を簡潔に語って聞かせた。
身寄りが全くないこと。
リストラに遭って、社宅を追い出されたこと。
退職金で自転車を買い、日本一周の旅に出たこと。
無計画に金を使っていたので途中で力尽き、ぼんやり花火なぞ観ていたこと。
「そして今、秀一くんに拾われた、ってわけ」
顧みて思えば、なぜ慶を家へ誘ったのか。
コンビニ弁当を渡して、おさらばすれば、それで済んだのではなかったか?
それでも慶は、放っておけない雰囲気を持っていた。
もしかすると、人が恋しくなったのかもしれない。
秀一は慶の話を聞きながら、そんな風に考えていた。
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