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もう一台、母の寝室にベッドがあるから、と言って慶を説得したのだが、秀一はそこで眠る気にはなれなかった。
莫大な遺産を残して夫が死んだ途端、派手に着飾り男の元へ走った女。
秀一は、母をそういう目でしか見ることができなくなっていた。
鬱病を患っていることも、伝えていない。
そのせいで休職までしていることも、話していない。
僕は、僕。
あの人には、関係ない。
狭いソファで、みじろいだ。
今夜も、寝付けそうにない。
処方してもらった誘眠剤も、もう無くなってしまっていた。
秀一は起き出し、自分の寝室へ歩いた。
慶の寝ているベッドへ潜り込み、その広い背中にそっと手を当てた。
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