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「パパはね、とっても優しくて温かい人だったのよ」
「ママのこと、いつも守ってくれてたんでしょ?」
「そうよ」
「じゃあねー、これからはあおいがママのこと守るからね!」
「ほんと?」
「うん! ママの笑顔が大好きだから!」
それは蒼空が私に言ってくれた言葉と一緒だった。
蒼空に会ったことのない息子が知るはずがないのに、時々驚くくらいに同じ言葉を言う時がある。
――あれからすぐ、私は自分が妊娠していることに気付いた。
それが嬉しくて、蒼空が最後に残してくれた宝物を精一杯守ろうと思った。
だから、今までを生きてこられた。
今はまだ蒼空のところには行けそうにないけど、その時が来るまで待っててね。
「あっ、ひこうき雲!」
蒼生が指差した空には、すっと白い線が伸びていた。
まるで蒼空へと続いていくみたいに、それはずっと跡を残していく。
――私の中の蒼空が永遠に消えないように、どこまでも。
【END】
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