ぬいぐるみ

1/4
前へ
/4ページ
次へ
「おい、何か間違ったか?」 「ん?届いたんか?」 「お、ぅ。届いた、つか。え、何、これ俺にどうして欲しいわけ」 「ははははっ!とりあえず抱きしめろ」 電話の向こうでさも楽しそうに笑い声をあげる俺の恋人。一緒に送られてきた真面目なプレゼントが霞むほどに存在感のある、というか段ボールを開けたらデカすぎてそれしか見えねぇっていう。 「……んー、まぁ、ひとまず、いらねぇけどあんがと」 子供二人分ほどありそうな、いや三人分はあるかも。そんな巨大なクマのぬいぐるみが誕生日に送られてきた。さらに巨大なリボンを首に巻いて。 そのでけぇクマの尻の下敷きになった待ちに待った揃いの指輪。 俺のデッサン通りのリングは梱包などありはしない。透明な袋にリングをポチャリと落としただけの色気もクソもねぇ殺風景さ。半年以上もこれを一緒に付けようと言えずにずっと引き出しの中に眠っていたデザイン画。ようやく切り出してから形になるまで更に3カ月。この刻印になんと入れるか俺がどんだけ悩んだと思ってやがるんだか。 こいつはコイツで、俺が気に入るかハラハラしまくってるんだろうがな。 それにしたってこのクマよ。 トロピカルカラーのぶっといリボン、腕に手書きのメッセージ、更には俺に付けろと言いたげに耳にピアスまで施された重装備。 こんなもん着飾って、コイツはいったいどんな馬鹿面さげてリボンを巻いたんだか。 想像するだけで愛しさが込みあがってきて、貯めこんだ会えないイライラも全部溶けて消えてっちまうじゃんか。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加