あたいねえさんとメガネねえさん

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あたいねえさんとメガネねえさん

 ここは、とある石川県にある設備屋さんの北陸営業所・・・ 白山の麓にある、これから実るであろう青々とした稲穂が涼しげに揺れる田んぼのすぐ隣に立っているプレハブ事務所。  そんな初夏のぼろ事務所で毎日のように働くね~さんたち。 今日は月曜日、いつものように朝から出社し、事務所前にあるプランターに水を撒く。  プランターに植えられているのは配管屋さんのじっさま達が勝手に植えているキュウリやらイチゴだ。  配管屋のじっさま達はうちの会社の監督員と一緒に営業所のすぐ隣に立っている大規模な半導体工場に朝っぱらから工事しにいっている。  おかげでキュウリ達の水遣りは、いつの間にかあたい達の仕事にされてしまっている。    まぁ別にいいけど。 水遣りもほどほどに、あたいとメガネねえさんは夏の日差しと蒸暑さを避けるため事務所に逃げ込むのだがこのぼろ事務所のクーラーはまったくきかない。  あたい「空調設備会社の事務所なのにクーラーがきかないのは一体どういうことなの!」  メガネ「毎年の事だけど・・・溶けそう・・・」  あたい「ここの社員共は客先の空調クレームには嫌そうな顔しながらでも直ぐに修理しに行くくせに、なんで自分の事務所は修理しようとしないの?」  メガネ「会社の仕事が優先で、身内の事は後回しなのよ・・・   男はいつもそう・・・」 あたいは時折りメガネねえさんが口にする「男は○○○・・・」の裏に隠されている闇の部分が怖くて聞くことが出来ない・・・  時計が9時を指そうとしたとき、事務所内の一番奥の席に座る営業所長が静かに呟く・・・  「行くか・・・」 その一言で机に向かって手を動かしていた工事課長と営業課長が無言で席を立ち、営業所の片隅にある会議室へ音も無く消えていく・・・  今日は週初めと言うことで本部とのテレビ会議が開かれる日だ、会議とは聞こえは良いが、実際は毎回仕事とってこいだの、あいつの残業が多いだの、一方的な罵倒がテレビの向こうから会議室の扉を突き抜けて響き渡ってくる一方的な虐殺の様な会である。  最後に、営業所長が寂しそうな目をしながら会議室に入り、力なく扉が閉められる・・・  事務所にはあたいとメガネねえさんしか残されていない。 会議室の扉が閉じられてから一呼吸置いた後、あたいはメガネねえさんにアイコンタクトを送る。  メガネねえさんは静かにめがねのレンズを光らせながらハンドサインを送りかえしてくる。  そのサインにあたいが頷くと同時に、二人は机の引き出しの奥に隠してあるあるものを物色する・・・  あたい「メガネねえさん!今日は何で攻める?」  メガネ「こうも暑いとシトラスくらいじゃないと太刀打ちできないかな?」  あたい「あたいは無香料で行くわ!出来る限り痕跡は残したくないもの。」 アタイ達がこれから行うこと・・誰も知らない、知られちゃいけない・・・   あたい「あたい達がこんなことしてるなんて、男たちには知られる訳にはいかないからね・・・」  この営業所の男たちはプライドが高く、下請け業者などに対する電話対応などは横柄なものだ、その傲慢な電話対応になんど耳を塞いだ事か・・・  そんなくせに自分たちが責められることにはめっぽう弱い。 そんな男達が今からあたい達がすることを知ってしまった日には、まるでガラスのハートを通り越してプレパラートハートの様な男たちのプライドは粉々に砕け散るだろう・・・  そんなやるせない気持ちを抑えながら手にしたある物の準備を進める・・  そんなあたいの心境を読んだのかメガネねえさんがポツリとささやく・・  メガネ「男は・・みんなそう・・・」  やっぱりあたいは、メガネねえさんの心の闇を覗けない・・・  これから始まる秘密の行為。  うまくは言えないけれども・・  口では言えないけれども・・  誰にもいえないけれども・・ あたい・メガネ「この事務所・・・男臭いのよ!!」  メガネねえさんがレンズを輝かせながら叫ぶ! メガネ「240秒でケリをつけるわ!」  メガネねえさんの叫びにも似た掛け声と同時に、あたいは走り出していた。 今日はトリガーがやけに軽い!いける!!  あたいとメガネねえさんは事務所の至る所で、まるで獲物を狩るハンターのように夢中でファ○リーズの引き金を引きまくっている・・・・。  ここはとある設備屋さんの北陸営業所・・・ たまにムカつくこともあるけれど、あたい達は元気です。
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