『おとうさん』

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凌一は毎晩言う。 「咲、そろそろ寝ようか」 咲の、柔らかく温かいカラダを抱きしめる。 さすがに咲が年ごろになってくると、凌一は鼻腔をくすぐる咲の女性らしいにおいにくらくらした。 この子は”娘”だーー俺は父親だーー 何度自分に言い聞かせても、どこかで”血がつながってない”思いは消せない。 健全な男だから、やっぱり”娘”とはいえ、ぺったりくっついていれば、カラダも生理的に反応した。 凌一は、それを咲に気付かれないように注意していた。 咲は安心しきって、毎晩、凌一の腕の中ですぐに寝てしまう。 ーー可愛い咲。 …愛している。 愛している… お前だけは、けがれないままで…俺だけの咲でいてくれ… あの元妻のようには…お前の母親のようにはならないでくれ… 凌一は眠っている咲の女性らしくなった背中をそっと撫でる。 艶やかな髪に手を這わせ、咲の匂いを嗅ぎ、規則正しい寝息を立てる可愛い鼻を見つめる。 小さな唇。 柔らかな、肌。 ーー咲。 咲…誰にも、誰にも、渡したくない…渡さない。 …けがれさせない… お前、だけは…美しい、ままでーーずっとそばに… 咲は……俺の理想。
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