芽生えるもの

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「却下」 ーーですよね… 嬉しくて、恥ずかしくて、真っ赤になって困る咲。 「隠す必要なんて、ないだろ」 確かに…誤解をするよりは、いい。 たとえ、これが、期間限定の恋だとしても。 月島先輩が…好き…だから。 「…うん」 「よし!」 ニカッとお日様みたいに、月島先輩は笑った。 「そうだ!…咲、今度、学校の外で会おうよ?」 先輩は、器用にフーセンガムをぷうっと膨らました。 ガムを噛みながらキョトンとする咲に、月島先輩は、ニヤリと笑った。 「もうすぐ夏休みだ。俺は”彼女”とデートしたい」 「デート…」 「たまにはゆっくり会えない?」 フーセンガムがまた膨らんでーーパチンと弾けて月島先輩のキレイな唇の中に戻って行く。 「…どう、かな」 咲は実は今まで『おとうさん』抜きで出かけたことがない。 ”デート”…そんなことはもちろん初めてでーー ーー『おとうさん』が、許す、かな? 咲は、何となく不安だった。 「あの、月島先輩、」 「はっ…またかよ。 …咲、”玲央”だろ? お前だけが俺の”彼女”なんだ」 月島先輩は、いたずらっぽく咲を少し睨んで口角を上げた。 「あ…ごめんなさい… れ…玲央…君…」 笑っていた月島先輩は、それだけで赤くなる咲の小さな手を、たまらない気持ちでギュッと握った。 「咲、好きだ。 咲が大好きで大事だ」 「月島先輩…」 「はい、ペナルティ発動。2回分。ハグ!」 「あっ…」 楽しそうに笑ってーー月島先輩は咲の腕を引き、胸の中に抱きしめた。 笑っていたのが一転、月島先輩の真剣な瞳が咲を捕らえてーー2人はそっと抱きしめ合う。 「”お友達”は終わり」 咲は真っ赤になってーー小さく頷いた。 そして2人は、ガムの香りの、初めての、優しい、優しい口づけを 小さく震えながら 柔らかな唇が触れるだけの口づけをーーかわした。
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