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次の日の昼休み。
咲は屋上に行かなかった。
かと言って教室にいるのもなんだか居心地が悪くて、やっぱり1人になりたくて、適当な空き教室に入り、内鍵をかけて、過ごした。
窓を開け、カーテンの隙間から、外を見る。
その日もいい天気でーー
毎日、空の色は違う。
雲も、その時々で形を変える。
ボーっと見つめる、咲。
ーー自然は、キレイだな…
咲は時間も忘れて、時折、合唱部の歌を口ずさみ、空を見ていた。
ーーーーー
「咲ちゃん、さっき、”あの”月島先輩が来てたんだよ!!」
「えっ…!」
咲が教室に戻ると、青葉(あおば)達、女子友達が少し震えながら言いに来た。
青葉は、咲と中学校が同じだ。
「昼休み、いきなりバーン!って入ってきて、『江藤咲はどこだ?教えろ!』って…!!
不機嫌で、怖かったんだよ~~!!」
「ほら、この学校って、他学年の教室に行ったらダメって決まってんじゃん。
なのに突然来たし、男子もみんなビビッてて。
たまたま入り口に近い青葉が答えるしかなくて…」
「咲ちゃんいつも昼休みはいなくなるから、『知りません』って言うとギロッと睨まれてね…そのままもの凄い勢いで走って行っちゃったんだけど…
殺人鬼みたいで、ホント怖かった~~~!!」
「ねえ咲ちゃんて、”あの”月島先輩と知り合いだったの?」
咲の胸が、震えた。
ーー月島先輩…が…ここに…
「…ごめんね、青葉ちゃん、皆も…迷惑かけて。
月島先輩とは、ちょっと前に偶然知り合っただけで…
ホント、びっくりさせて、ごめんね」
席に着くと、咲は胸を抑えた。
ーーなに?
私…すごくドキドキしてる…
これ…私…嬉しいんだ…?
そんな…でも…
私、どうしても月島先輩が好きなんだな…
自覚すると、ズキッと胸に痛みが走る。
同時に咲の脳裏に『瑞穂』の姿が浮かぶ。
でも…やっぱり、もう会えない…会わない。
月島先輩には、素敵な”彼女”がちゃんといるんだから…ダメ…
忘れなきゃ…
忘れよう…
大丈夫、きっと…忘れられる。
誰も、悲しませたく、ないからーー
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