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次の日。
咲はまた、昨日の空き教室にいた。
窓から空を見上げる。
1日たっても、胸は痛い。
『日にち薬』ーー日にちが経つことが、一番の薬だってーー昔失恋を経験した中学時代の友達が言っていたな。
3日、3ヶ月、3年ーー?
どれだけ日にちを過ごしたら、この胸の痛みは消えるのかな。
月島先輩は、3年だ。来年には、卒業してしまう…
ーー大丈夫…きっと大丈夫…忘れられる…
呪文みたいに自分に言い聞かせる咲。
その時、開け放った窓から強い風が入り、クリーム色のカーテンが大きく揺らめいた。
カーテンの向こう。ふと、屋上が見えた。
「…っ」
月島先輩…!
柵にカラダを預けて、屋上からきょろきょろと辺りを見下ろしている。
あ…!
こっち…見る…
月島先輩の目線がこちらに向くほんのわずか前、咲はカーテンにパッと隠れた。
ドキ…ドキ…胸が苦しい。
キューっとなる。
姿をチラっと見ただけで、もの凄い破壊力だ…
「…」
咲はギュッと胸をおさえた。
今の…見られて、ない、よねーー?
ああ、やっぱり…好きな気持ちには、蓋は出来ないーー
いつか
この胸の痛みが薄れるまでは…
勝手に好きでいても、迷惑じゃ、ない…よね…
今は、離れるから…きちんと、離れるから…
気持ちだけは、自由でも、いいよね…
カーテンの隙間から、こっそり屋上を見上げる。
2人で何日も過ごした、あの場所。
大好きな、”秘密基地”。
「ん…?」
月島先輩の姿はない。
何だか嫌な予感に、咲はパッと教室を飛び出して、階段の影に隠れた。
「咲ーーー!!!」
けたたましく駆ける大きな足音。さっきまで咲がいた教室のドアが勢いよく開く音。
「…咲!…咲!!!
…くそっ…」
バン!と何かを叩いたか、蹴った音。
月島先輩…。
まだ、胸が、苦しいよ。
人を好きになんか、なったら
苦しいんだね。
こんなにーー
好きです…
咲は潤んだ瞳から涙を追い出すように瞬きして、
そっとその場を離れた。
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