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次の日の放課後。
咲が部活に向かっていると、生徒全員が絶対に通る、校舎中央の1階の大廊下の真ん中。はるかはるか先に不機嫌そうな月島先輩が仁王立ちしていた。
他の生徒たちが恐る恐る端っこを通っていく。
「っ…!!」
まずい…!
会えない…もう、会いたく、ない。
咲が外からまわろう、とくるっと踵を返す瞬間、かなり遠いのに、なんと一瞬目が合ってしまった。
目を見開いて、鬼の形相で前傾姿勢で駆けだそうとしている月島先輩。
「うわ…!」
見つかった…!!
咲は一目散に走る。
すれ違う生徒たちが何ごとか、と咲を見る。
その後全速力で追いかけていく月島先輩を見て、生徒たちは震えあがった。
「あの子、何したの?」
「殺される勢い」
「月島先輩、悪鬼みたい…」
「待てぇゴラ!!!
咲ぃ!!!
さぁあきぃぃ!!!!」
怒りに満ちた低い声が、巻き舌になって咲を呼んだがーー咲は聞こえないふりをして懸命に走った。
「はあっ…はあっ…」
月島先輩の足はとても速く、ほんの5メートル弱走ったところで、咲の腕は後ろからガツッと掴まれた。
「あ…!」
逃がすまいと加減なくつかまれた、腕。
指が食い込み、咲はその痛みに顔をしかめる。
乱暴に二の腕を掴まれ、グイっと振り向かせられると、月島先輩はぎろりと咲を睨んだ。
「お前、なんで…逃げる?!」
「はあっ…はあっ…はあっ…」
両方の二の腕をギュッと掴まれ、対面させられている咲の息はおさまることなく、
咲の呼吸が落ち着くまで、月島先輩は咲をじろっと睨んだまま。
やっと咲の呼吸が落ち着くと、月島先輩は口を開いた。
「言え。
なんで、来なかった?
なんで、俺から逃げる?」
低い、声。
じいっと視線を睨むように合わせられて、咲はコクンと喉を鳴らした。
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