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「…もう、っ……”月島先輩”とは、あっ…会えません…!」
目をギュッとつぶって勢いよく言った。
「はああ!?」
今まで見たことがないぐらいの、イライラした、怒りの形相ーー。
咲は震えながらも、続けた。
「月島先輩、”彼女”が、ちゃんと、いますよね…
だから、ゼッタイ、”浮気”は、ダメです」
怖くても、もうこれが最後と思って、目を合わせて言った。
月島先輩は、驚いたように目を一瞬開いてーー少し考えると、その後、目をギラギラと光らせた。
「ああ!?
…瑞穂だな?瑞穂がお前に何か言ったのか!?」
”瑞穂”
ーーやっぱり…。
その親しい呼び方に咲の胸がズキンと痛む。
月島先輩は、呆れたように息を吐くと、咲を掴む手の力を少し緩めた。
「あのなあ…瑞穂とは、5月に別れてる。あん時言ったろ?”彼女”はいないって…」
ーーえ…?………別れ…?
月島先輩は、大きくため息をつく。
「あいつ、しつこいな…咲に…
わかったよ。
もう一辺、話、つけてくる」
「…あの」
月島先輩は、目線を合わせて咲の顔を覗き込んだ。
「ケジメつけたら、咲が俺の”彼女”って公開するぞ」
「…」
咲は焦った。
「あの、でも…!!」
ーー瑞穂さん…がーー
「”でも”も”くそ”もねーわ」
睨んで、手を離してーー月島先輩は、咲の頭にポンと手を載せた。
「話付けてくるから…信じて待ってろ。
お前は俺の”オンナ”だ。
今さら逃げられると思うなよ。
明日はきちんと屋上に来い」
「……
あの…!!」
「は?」
「あの……傷つけないであげてください…
私は…私なら、大丈夫なんです…」
「はあ?」
ギロリと睨みつけられる。
「…っ……だって…瑞穂さん…ホントに、本気で”月島先輩”のこと、好きなんです!」
ーーあの顔。あの表情はーー
咲の目は潤んで、必死に月島先輩を見上げた。
ーー人を好きになる幸せも、諦める苦しさも…
激しく心を揺さぶられる、本気で、真剣な思いは簡単に止められないーー
自分はまだ恋の”入り口”だったけれど、”深く”付き合った恋人同士である2人なら、瑞穂さんはなおさら…苦しいはず…
「ホントに、ホントに…好きなんですよ…?」
一生懸命な、咲のその顔ーー
月島先輩は、しばし固まってじっと咲を見つめる。
それから、小さく息を吐いて言った。
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