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「…俺の気持ちはどうなる?」
静かな、声ーー咲は、ハッとした。
「俺はお前が好きだ。
俺が好きなのが、咲なんだ」
「…」
「咲は…咲の気持ちは、『大丈夫』って…
他の女に俺を譲れる程度ってことか」
「…違…っ!!」
「このまま逃げて、俺と関わらないつもりだったのか」
「…」
思わず咲の目が潤む。
違う…!
でも…
…違わない…
月島先輩は呆れたように、困ったように息を吐いた。
「…今、お前がしてることは、俺にも瑞穂にも残酷なことって、わかってる?」
「あ…」
「ゆずろうとか…生意気にハンパしてんじゃねーよ」
月島先輩が圧倒的迫力で睨むと、咲は、震えて小さく頷いた。
ーー”傷つけないで”なんて…”自分が身を引く”なんて…
ホントに、それでいいなんて…
『残酷なことって、わかってる?』
…私、バカだ。何様だろう…
傲慢、だったんだ…
「ごめ…んなさい…」
月島先輩は心から反省した様子のーーシュンと俯いた咲にーー困ったような顔で笑うと、咲の頬に手を当てた。
「ったく…お前は…
驚くほど足が遅いくせに
よくこの俺から逃げようと思ったよな…」
「っ…」
「明日は、ちゃんと屋上に来いよ。
絶対、逃がさないから…」
自分を見下ろす月島先輩の目が、どこか艶めいてーー咲はまた震えたのだった。
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