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ーー好き。私も…
何だかフワフワして…夢みたい…
…でも。
ゆっくり息を吸うと、咲は月島先輩をじっと見つめ返した。
「あの…先輩には、
…”彼女”が…いますよね…」
咲が聞くと、月島先輩は一瞬わずかに目を開いて、それからぽつりと言った。
「…いない」
「…」
咲はビックリした。
ーー彼女は”いない”?あれ???そうなの?
…そうだったんだ…?
「…返事は、待つ。
…ダメなら、追いかけない。
まあ…ダメでも、今まで通り昼休みはここに来い
お前は俺の”お気に入り”なんだから」
「…」
ーー”お気に入り””追いかけない”
咲は、真っ赤になって、隣でスッと立ち上がろうとする月島先輩の制服の袖の裾を思わず握る。
ーーもてるし、とっかえひっかえ”彼女”を切らしたことがないと噂の月島先輩…。
もし私が”彼女”になっても、いつまで続くかなんてわからない。
でも…。
親のことがあって、今まで、咲は恋愛に臆病だったのかもしれない。
自分が誰かを好きだと言うことで、人を傷つけたくなかったのかもしれない。
”彼女”がいないならーー
咲は、初めて生まれた自分のこの気持ちには…嘘をつきたくなかった。
私も、好き。先輩が…好き…。
「咲?
…返事はまだいい。
今すぐ振られたらさすがの俺でもへこむわ」
苦笑いする月島先輩に、咲は小さく首を振った。
「…咲?」
咲は、真っ赤になる。
「あの、あの…
わっ…
私も!……好きです…」
月島先輩が、息を飲む。
「あの、私…
男性を…好きになるのは初めてで、よくわからないけど…
先輩といると、嬉しくてフワフワして、苦しくて胸がギュッとなって…
だから多分、
私、先輩が…とても好きなんだと思います」
「…」
月島先輩は一瞬、泣いているのか笑っているのかわからない顔をした。
「咲…。
”多分”でも、
…我慢できそうにない」
月島先輩は咲の前に屈み込むと、その大きな手を伸ばして、咲の頬を両手で包んで上向かせた。
「…!」
咲は息が上がってしまってーー先輩を直視できず、カラダをこわばらせて目をギュッとつむった。
微かに震える月島先輩の冷たい唇が、咲のおでこを掠めたーー
「…!
~~~~~…」
初めてのことにビックリして、湯気が出そうに、カアッと真っ赤になる、咲。
月島先輩の唇がおでこから離れてーー咲が恥ずかしくていたたまれず、顔を両手で覆うと、先輩が笑う。
「はっ…
やべーなー…
咲、可愛いすぎる…」
咲が月島先輩を思わず見上げる。トロンとした柔らかな目線。目元にほんのわずか赤みがさしてーー
「お前も俺も、小学生みたいだな…
今さら…この俺が…緊張…
しかもデコで…(笑)」
「…っ…」
絶句する咲を見て、クスっと月島先輩は笑ってーー咲の鼻の頭をちょんとつついた。
「ハハッ…
咲は、”初めて”丸出し」
咲はまた赤くなった。
「好きだよ…咲
ゆっくりでいい、俺のことを知ってほしい」
「先輩…」
咲が真っ赤になって見つめる。
「私も、もっと先輩を知りたいです…
あ、あのっ…
ゆっくり…初めは”お友達”でもいいですか?」
「ふふ…うん。
いいよ。
”お友達”から…な。わかった。
…ありがとう、咲」
月島先輩は楽しそうに微笑んでーー2人は時間いっぱいまで見つめ合って話をしたのだった。
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