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環先輩ははき捨てるようにそう言いながら、私の手を握っていた須藤さんの手を振り払った。
御曹司相手に慣れ慣れしく、そして偉そうに意見をする環先輩のことをみんな心配そうに眺めている。
相川部長にいたっては、卒倒しそうなくらい顔色は真っ青だ。
でも、須藤さんは穏やかな笑みを絶やさない。
それどころか、ますます微笑みは柔らかい表情へと変わっていく。
「たしかに、これは僕の我儘ですね。それに横山さん、あなたのいうことも一理ある。ですが、僕がこれから背負っていかなくてはならないこの業界は、どうしても女性の意見や目線が必要不可欠になります。できれば、男性であるあなたより、営業の勉強も共有でき、そして女性である彩香さんと組む方が一石二鳥なのです。僕が彼女を選んだのはそんな理由からです」
淡々と言葉を並べ、環先輩に説得を試みる須藤さんの顔は涼しいものだ。
それに対して、環先輩は苦い顔をしている。
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