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ショートブーツのヒールの音を鳴らせて早歩きで歩くのは、自分の気持ちが急いているからかもしれない。
待ち合わせ場所に辿り着いた時には、約束していた時間よりも十分も早く着いてしまった。
「やだ……私、浮かれてる……?」
自分の腕時計を見て時間を確信してから、恥ずかしくて頬を染めてしまう。
まるで子どもみたいな行動をした自分が信じられなかった。
須藤さんに会う前に、もう一度身なりのチェックをしておこうとファー鞄の中からミラーを取り出す。
崩れていた前髪を手櫛で整えていたら、スマホの着信音が鞄の中で鳴り響いた。
「あっ、須藤さん」
スマホ画面に映し出される名前に、胸の心臓が飛び跳ねる。
私は深呼吸を一度してから、通話に出た。
「はい、吉永です」
『彩香さん? 須藤です。もう着いてる?』
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