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須藤さんは額の汗を拭くことを止めず、ずっと私の目を見て申し訳なさそうに語る。
私はというと、子どもみたいにされるがままの状態だ。
「……ちょっとファンデーションが取れちゃったね。メイク直し、したいよね」
「それは……まぁ」
端正で整った顔立ちの須藤さんの隣に今日一日、一緒にいることを想像したら、今すぐにでもメイク直しをしたいくらいだ。
だから私が同意すると、須藤さんは花が咲いたように明るい笑顔を曝け出す。
「うん、それじゃあいいところに行こう」
「いいところ?」
「実をいうと、今日の一番の目的はそこなんだよね。そこに行ったあとにランチに行こう」
善は急げ、という感じで、須藤さんは私の背中を押すと同時に助手席のドアを開けて中にはいるよう促す。
私は流されるまま、助手席に足を踏み入れ、そのままシートに座った。
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