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私がシートベルトを締めている間に須藤さんはスピーディーに運転席に乗り込むとシートベルトを締めて、車を発進させる。
鼻歌を歌うくらい横顔がご機嫌な須藤さんに、私は緊張しながら声をかけた。
「あのぉー……いったいこの車、どこに向かているんですか?」
「それはお楽しみ。まだ誰にも言っていないところだから、彩香さんだけ特別だよ」
「特別……」
そんな意味深な言い方をされると、心臓がどきんと跳ね上がる。
それはなんなのか聞こうとしたけれど、須藤さんが視線だけ私に移すと、「もうちょっと秘密」と言って、ニッコリと笑った。
そんな状況に陥れられた私は、軽やかに運転する彼の横顔を何度かチラチラ見るだけで、もうそれ以上は何も聞けずにいた
車は大通りをニ十分ほど走ると住宅街に入り、コインパーキングに停まった。
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