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須藤さんは本当に嬉しそうに笑うと、それ以上はなにも語らず、慣れた手つきでアイメイクを仕上げていく。
私ももう何も語らず、全てを須藤さんに任せていた。
そしてアイメイクは終わり、次に手に取ったのはマスカラだった。
「アイライナーはしないんですか? せっかく須藤さんが開発したのに」
「うん、本当は使おうと思ったけれど……これはもういいよ」
須藤さんは儚げに笑いながら、自身が開発したアイライナーはもう使わないという。
私としては、作った本人から直々にメイクをしてもらえるなんて、そうない機会になかなか期待していたから、ちょっと残念だ。
「私、このアイライナー好きです。私の普通の目でもすごく綺麗に見せてくれるから」
きっと万人受けするものなんだろうけど、親友の優菜も言ってくれたことがある、これは特に私の目の形に合うアイライナーだ。
これを使うと一気に目元が華やかになるから、私自身もとてもお気に入りの商品だった。
「彩香さんはこんなものを使わなくても充分、綺麗だよ」
それなのに、須藤さんはお得意の甘い言葉で私の気分を高揚させてくれる。
結局、そんな雰囲気のままメイクは仕上がり、最後にグロスを唇にのせて私の変身は完了した。
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