●御曹司と初デート●

24/24
8294人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
須藤さんは本当に嬉しそうに笑うと、それ以上はなにも語らず、慣れた手つきでアイメイクを仕上げていく。 私ももう何も語らず、全てを須藤さんに任せていた。 そしてアイメイクは終わり、次に手に取ったのはマスカラだった。 「アイライナーはしないんですか? せっかく須藤さんが開発したのに」 「うん、本当は使おうと思ったけれど……これはもういいよ」 須藤さんは儚げに笑いながら、自身が開発したアイライナーはもう使わないという。 私としては、作った本人から直々にメイクをしてもらえるなんて、そうない機会になかなか期待していたから、ちょっと残念だ。 「私、このアイライナー好きです。私の普通の目でもすごく綺麗に見せてくれるから」 きっと万人受けするものなんだろうけど、親友の優菜も言ってくれたことがある、これは特に私の目の形に合うアイライナーだ。 これを使うと一気に目元が華やかになるから、私自身もとてもお気に入りの商品だった。 「彩香さんはこんなものを使わなくても充分、綺麗だよ」 それなのに、須藤さんはお得意の甘い言葉で私の気分を高揚させてくれる。 結局、そんな雰囲気のままメイクは仕上がり、最後にグロスを唇にのせて私の変身は完了した。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!