2 パイン

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 食堂でたまたま舞を見つけた時、拓は身体が少し浮いた気がした。  自分でも浮かれた声が舞の名を呼び、手を振る。 「舞ちゃん」  舞はテーブルに買ってきたらしい昼食のトレーを置き、手を振り返してくれた。  その顔が少し困っている。  あれ?と、浮かれた心にちょっとブレーキをかけながら、舞に近づいていくと、目立つ二人が目に飛び込んできた。 「二人もいたんだ」  思わず拓がそう呟くと、目立つ女が顔を上げた。静香だ。(なぶ)るような目で、嬉しそうに拓を見ている。その向かい側で、綺羅が憐れむように拓を見上げていた。  しまった、と思ったのも後の祭りで、その後散々嫌味を言われてしまった。  なんで気が付かなかったんだろう。  静香も綺羅も嫌いではない。むしろあの独特な性格は、面白くもあり、憧れでもある。  だが、自分を標的に、その個性を発揮するのは止めて欲しい。  しかも、(好きな人)の前で。 「一緒に食べようよ」  せっかくの舞の誘いも、その気の毒そうな表情では、拓は情けなくなるばかりだった。  浮かれた気持ちにカウンターパンチを食らって、拓はいたたまれなくなって、敵前逃亡した。  要するに、昼飯を買いに行くと、そそくさとその場を離れたわけだが、そんな拓に貴宏がついて来る。 「よかったな」  舞たちのテーブルから離れて、貴宏がそう切り出した。 「は?何が?」  自然と声が尖る。こいつ、何を見ていたんだ。 「舞、お前のこと、庇ってたじゃん」  拓は足を止めて、貴宏を振り返った。  貴宏の表情は読めない。慰めている風にも見えない。何ということなく拓を見て、淡々としゃべっている。 「あの二人に怒っていたよ、ほら」  舞はスパゲッティを食べていた。 「一緒に食べよう」と言っていたのに、脇目もふらず食べている。隣で、静香がオロオロしていた。 「舞って、感情が高ぶると、口に出す代わりに、食べるよな」  貴宏の言葉に、拓は情けないのか嬉しいのか分からなかった。  まぁ、いいか。  俺の為に舞が怒ってくれた。それは嬉しい。 「俺、カレーにしよう」  貴宏がそう言うので、拓もカレーにすることにした。  カレーの匂いが鼻腔をくすぐり、拓は猛然とお腹がすいてきた。
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