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舞も今までの女の子と同じだ、という認識を改めたのは、舞が突然静香に謝って来た時だ。
「静香は友達でいてくれたのに、わたしは一歩引いてた。それがどんなに傷つけることか気が付いていなかった。自分の事しか考えていなかったから」
目を潤ませながら、真剣な顔でそう言う舞に、静香は慄いた。
舞は静香の友情を信じ、それを信じ切れなかった自分を責めている。
そう仕向けたのは、わたしなのに。
友情にかこつけて、邪まな気持ちを植え付けようとしていたのはわたしだ。
舞が壁を作っていたのは、分かっていた。
その舞の劣等感のようなものが、可愛いと思っていたし、壁を感じてもそれを壊そうとせず、楽しんでいたのは自分だ。
その壁がついに壊れ、舞がこちらに身を委ねて来た時のことを想像して、手ぐすねを引いていたのは自分だ。
傷つけるかもしれなかったのは、わたしだ。
しかも……
「貴宏に言われたの。静香は舞の事を好いてくれているのに、友達じゃないと言われたら、静香が可哀そうだって」
舞はそう言って、落ち込んでいた。
「貴宏が言ってくれたの」
そう言って、貴宏を想っていた。
気が付いたら、舞を慰めていた。
「好きな人に言われたら、些細な事でもショックだもの」
そう言うと、舞は驚き、赤くなって俯いていくのを、静香は横目で見送った。
あの顔は、わたしが欲しかったものなのに。
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