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「どうしよう、静香。わたし初めてで」
学祭の日、舞は恋に目をキラキラさせて、貴宏にはまっている現状を、静香に告白してきた。
皆で出店したお好み焼の店は、好調だった。この調子では早々にキャベツがなくなって、完売すると見越した静香は、張り切って売り子に努めた。お好み焼きは飛ぶように売れ、静香の目論見通り、出店は早々に完売終了することができた。
誰よりも早く舞を誘い、同じことを考えていた拓を撃退して、静香は意気揚々と舞と大学祭デートをするつもりだった。
それなのに……
舞は静香と二人きりになると、待っていましたとばかりに、貴宏への溢れる恋心を静香に話し始めたのだ。
「その笑顔を見た瞬間、もう他の事がどうでもよくなったの」
恥ずかしそうに、それでも興奮気味にしゃべる舞はとても可愛かった。
あーあ、やっぱり貴宏を舞の家に行かせるべきじゃなかったな。
心を開いてくれた舞の親友ぶりたかったのかもしれない。
貴宏に憧れている舞があまりに可愛かったので、手助けしたかった。その頃の舞の貴宏への気持ちは、まだ中学生並みの憧れの域を出ておらず、静香のほうが、よほど舞をドキドキさせている自信があった。
だけど、ある日から舞が変わった。
どこをどのように、と言われたら困るが、いつの間にか恋に落ちている女の顔になっていた。
もうドギマギしている可愛いだけの舞ではなくなった。恋に必死な、したたかな女だ。
やばい、と思った。
きっと自分も、本気になってしまう。
もはや、傍観者ではいられない。
貴宏の不憫な片思いを笑った報いが、自分に返って来る。
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