コンビニごはん

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 あの日以来、あいつはコンビニに来なくなった。俺がレジに立っている時間に見かけなくなってから、半月が過ぎた。  予約のクリスマスケーキのビラを配りながら、俺はどうにもうわの空だった。  今頃、どうしているだろう。  一人で、なにを食べているのだろう。  ただの店員と客に過ぎないのに、半端に関わりすぎてしまった。あの子に、とばっちりがいってなければいいのだが。住所も知らない。確かめようがない。 「いらっしゃいませ」  いつものように声をかけると、あの子がいた。いつか見た、あの母親と一緒だった。  いつもの青いカバンは背負っていない。少し、頬が丸くなっただろうか。母親はスッキリしたコートを着こんでいる。  二人は肉まんとあんまんを一つずつ買って帰っていった。母親は、レジに俺がいることは気づかなかった。あいつは、俺を見てニヤリと笑った。  俺もニヤリと笑い返してやった。  俺は今日もレジに立って、たくさんの客に食べものを売っている。
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