You're My Only Shinin' Star.

3/9
前へ
/9ページ
次へ
 守屋のおかげだけでもあるまいが、プレゼンの感触は良好だった。  質疑応答にもそつなく対応し、このまま神奈川の研究所に寄ると言う守屋とはそこで別れる。何度も深々とお辞儀をするヨシトに、じゃあ頑張れよと声を掛け、守屋は身を翻した。  後ろ姿を見送るヨシトの口からついついこぼれるのは、 「カッコいいッスね」 「カッコいいよねえ」  真剣に同意する新村に、やっと問い糾した。 「守屋さん、宮地本部長とどういう関係なんですか!」 「関係っていうか、守屋君ね、君が入社する前はうちのエースだったんだよ」 「ええっ?!」  でもずっと異動希望出してて。広報にって話もあったけど、どうしても開発がいいって、と新村が語るむかし話はもちろん初耳だった。  開発から営業への移動はあるが、逆はめったにない。しかも新村がエースというなら相応に好成績だったのだろう。それでも異動… と呟くヨシトに、新村は更に衝撃的なことを言った。 「でもね、宮地本部長にとってはたぶん、守屋君はまだ高校球児なんだよ」 「…はっ?」  こうこうきゅうじ? と目を丸くするヨシトに、新村は静かに微笑んだ。 「性格的に本人は言わないだろうけど、守屋君、高校のとき野球部で、全国制覇してるんだよね」 「ぜんこくせいは… って、野球ならつまり、甲子園、とか」 「それそれ、夏の甲子園。何年前かなあ… 村上君、いま何年目だっけ? あ、そう、じゃあ10年くらい前なのか」  守屋の年齢を考えればそうなる。新村は頷きながら、 「覚えてないかなあ? △△△、超高校生級の左右の二枚看板って話題になって… 無理か、中学生だもんねえ」  高校名ならさすがに知っている、スポーツ名門校だ。出身のプロ選手も何人も居たはずで、はあ、と頷くヨシトだが、やはりまったく記憶にはなかった。なにせサッカー部だし。それに、守屋の佇まいとヨシトの球児イメージはまったくかすらなかった。 「宮地本部長、あの高校のファンでね。特のあの代は記録的だったからねえ、エースは両方プロ入りしたし、他にも居たんじゃないかな。守屋君は外野手だったかな、すごく活躍したらしいんだけど」 「えっ、じゃあ、守屋さんもプロ、とか…」 「大学までやってたみたいだけどね、どうだったんだろ」  そんな話をするうち、あっという間にオフィスに辿り着き、結局、そのまま立ち消えになってしまった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加