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ほとんど夜と呼べる時間に、部長に声を掛けられた。
「明後日、M社に新製品のプレゼンだろ? 向こうは誰が来るんだって?」
「あ、はい、宮地本部長も出席だそうです」
資料を整えながら、営業部二年目の村上由登は慌てて頷く。そうだろうな、と言いながら部長は少し考える素振りを見せた。
「じゃあ、開発部の守屋も連れてけ」
「え?」
「開発には話、通しとくから」
ヨシトが訝っていると、部長は「気張れ!」とハッパをかけると背を向けてしまった。
開発部の守屋さん、といえば、ヨシトも知っている。
守屋雅春、5、6年目か、仕事が出来ると評判な上にけっこうなイケメンだ。更に言えば運動神経もいい。社内のフットサル大会で対戦したが、サッカー経験者のヨシトでもドリブルについて行くのが精一杯だった。当然、女性社員の人気は絶大である。
「あの、なんでですかね…?」
部長の提案を報告し、グループリーダーの新村におずおずと聞いてみれば、ああ、と新村は微笑んだ。
「宮地本部長、守屋君のファンだからねえ」
「ファン?!」
どういうことですか? イケメンだから? と慌てるヨシトに「違うちがう」と笑いながら新村が言うには、
「たぶんね、守屋君は宮地本部長のヒーローなんだよ」
ひ、ひーろー? とまたもや唖然となるヨシトを他所に、新村は「アジェンダの参加者修正した? あと鈴木さんに頼んだパワポの見直しは?」と仕事に戻ってしまった。
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