始まりの電話

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私、こと町田征子(まちだせいこ)は、都内のまあまあ名の知れた企業に勤めている、ごく普通のOLだ。 さっきの電話の相手、唯センパイは学生の頃の先輩だ。 女子大のユル~いバドミントンサークルで、3年間コンビを組んだバディだった。 学年は違えどがやたらと気が合い、卒業して別々の会社に就職した後も、何かと世話を焼いてくれる、親切な女性(ひと)。 今から1年程前、私がちょっとばかりヘビーな失恋をした時も、会社で言われぬ愚痴や泣き言を一身に受け、ひとかたならぬ恩を受けた。 そのためか私は、彼女にはさっぱり頭が上がらない。 彼女ときたら、当時相当ヤバかった私を何かと心配してくれていて、 『失恋を癒すには新しい恋をするのが一番!』 と、幾度となくこういう話を持ってきてくれる。 私としてはもう現世の男性はコリゴリで、この若さで早くも厭世(えんせい)気味。 今の恋人は(もっぱ)ら古今東西の恋愛小説、映画ドラマの登場人物。 …ってなわけで、カレシと今ラブラブな唯センパイの『シアワセのお裾分け』的なお節介には、正直困惑しているところでして…。 とはいえ、行かねばならんだろう。 唯先輩のその気持ちだけはありがたいし、義理人情は大事にせねば、女がすたるってもんだ。 でもなぁ、デートかあ… 久しぶり過ぎて、着ていくものもないってのに、初見のダテ(なにがし)と。 むう… 上下ジャージじゃ、マズイよなあ。  
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