lesson2 彼女が泣いたら

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私の昼飯がスティックパン2個から超グレードアップし、1日の栄養源に変わって、1週間が経った頃。 このところ、にわかに周囲が騒がしい。 そりゃあそうだろう。 社内きってのハレモノ(土井さん)とキズモノ(私)が、ある日突然、毎日のように一緒に食事をしている。 そんな面白い話が、口さかない連中の話題にのぼらないほうがおかしい。 その噂は、すでに社内の若い連中の間で知れ渡っていたのだ。 しかし。 私は迂闊だった。 ヒヨコのお世話に一生懸命で、つい周りへの配慮を怠っていたのが敗因だった。 互いに全くそんなつもりはなかった事も災いした。 その日、我々はいつものように食堂に向かっていた。 他人に厳しいだけあってこの男、飲み込みはすごく早いのだ。 たった一週で完璧な速度調節と、距離感を身に付けた彼は、もう最初のようなヘマはやらかさない。   給料日前の今日、懐の寂しい外食組が押し寄せたせいか、食堂は特に混んでいた。   先を行く彼が何気なく取ったその席に、私は座るのを躊躇った。 その近くに、かつての職場、営業課の一団が陣取っていたからだ。
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