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案の定、聞こえるか聞こえないかくらいのヒソヒソ声から、私への攻撃が始まった。
(…相変わらず面食いだよな…)
(…クソビッチが)
彼が水を汲んで(モチロン自分の分だけだよ、こいつ)戻ってきたので、一旦声は収まった。
私は、彼の影に隠れるように縮こまって俯いた。
「…食わないの?」
不思議そうなに私を覗きこんだ彼の様子を見て、彼らはもう少し声を大きくした。
(…あいつさ、まだ支払い終わってないんだろ…)
(カネ目当てじゃね?
…だいたいアイツってさあ…)
彼は全く気にする様子もなく、いつもと同じペースで食べている。
一方、私のランチは手付かずのまま。
徐々に動悸が激しくなって、仕舞いには妙な汗と瘧のような震えが止まらない。
やがて彼らの中の一人が痺れを切らして立ち上がった。
こちらに向かって…やってくる!
彼は、私の目の前で嬉しそうにライスをかっ込む土井さんの肩をトン、と叩いた。
「ちょっとすいません。
確か…経理の土居さん、ですよね?」
爽やかに声をかけてきたその人間を、私はよく知っている。
だから次の展開は、容易に予測出来た。
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