lesson2 彼女が泣いたら

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「そのヒト、あんまり信じない方がいいと思いますよ」 「は?」 キョトンとして男を見上げる土井(かれ)。 私は、その後のやりとりを知ることが出来なかった。 「……っ!」 何故なら、その言葉が聞こえた途端、私は椅子を立ちあがり、走り出していたから。 走った。 食堂のテーブルの間をすり抜け、隅っこ窓側の非常口を出、螺旋の非常階段を。 それでも、 彼らの侮蔑の笑い声や罵声は、どこまでもどこまでも追いかけてくる_____ それを振り切ろうとして、私は懸命に階段を降りる… 12階の食堂から一気に駆けた私は、裏の緑地帯の陰に隠れ、胸を押さえて息継ぎをした。 ああ、なんて迂闊な。 つい忘れていた。 自分が人の集う場所を、極力避けていたコトを。 心を揺さぶられないように、自分をガードしていたコトを。 頬を熱い滴が伝う。 嗚咽が込み上げる。 とっくに閉じた筈の傷口が、再び誰かにこじ開けられる、そんな気がした。 「…うえぇ……ぇぅ…」
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