lesson2 彼女が泣いたら

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と、 「…見ーつけた」 ふいに背後から、抑揚のない低い声が響いた。 いつの間にか後ろに立っていたのは、土居さんだ。 恥ずかしいとこ見られちゃった。 「どうして出ていくんだよ。前にも言ったが、俺は別に気にしてない…」 「私は…私は、気にするんですっ!!」 思わず声を荒げてしまった。 びくっと彼が肩を震わせる。 「…ね?これで分かったでしょう?私といれば、こんな事になるんです。 本当は、アナタの期待にこたえられるような……私じゃない……っ… 折角だけど…やっぱり約束はなかったことに……」 「それは困る。俺には君(のコーチ)が必要なんだ。 ……教えてくれ。 カノジョが泣いてる時、俺はどうしたらいい?」 …は? オイオイ、こんな時で聞いてくるか? 普通。 思いながらもツンと横を向き、私そっけなく答えた。 「さ、さあね。ハンカチでも渡せば?」 「さっきトイレで使ったけど、これでいいか?」 「断る! もう、ティッシュとかないの?」 「机の中。  な、例えば…そう。 君のカレシなら、こんな時、どうしたろう?」 私の…… カレ…… そっか… 「彼ならきっと…」   彼の前で泣いたとき_____ 彼は、新入社員のワタシのフォローアップ担当だった。 総合職で入社して1年目からの営業課、ノルマがすごく厳しくて、1件も取れずに泣きわめいた。 あの時彼は_____ 「…大丈夫だよって……腕の中に…引き寄せてくれたと…思います」
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