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こうして、我々の食事場所が、社員食堂から人気の少ない中庭の片隅になり、数週間が経った9月初旬。
「なあ…キスさせてくれないか?」
「ぶっ…」
ちょっと焦げかけた卵焼きを危うく箸から落としそうになった私は、逆の手で何とかそれをひっ掴んだ。
「ち、調子に…乗るなっ~~!」
何を言い出すかと思えば、この破廉恥野郎!!
ポカポカと彼の頭を叩く。
「わっ、チョ…待って…、
話を聞いてくれ」
まあ聞こう。
卵焼きの塩加減の良さに機嫌を直した私は、再び着座した。
「いつもタイミングを間違える。
俺がしたくなった時にしたら、何人かは泣かれた。何人かはそのままカラダだけの関係になってしまった。それからすぐ、フェードアウトした」
なんとまあ…
「…アンタさ、そんなんでよく、いい仕事できてますね」
「仕事はいいんだ。俺の場合、上から目線でいけるからな」
…企画担当ども、可哀想に。
「つまり、その調子でやってたらダメだったと」
「おう」
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