lesson3 キスのタイミング

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「あっ…」 私は彼の耳に口を当て、すうっと大きく息を吸い込んだ。 「…ったりまえだぁぁぁ~~~っっ」 彼のよく使う、『バッカヤロー!』よりも数段大きな声が、緑地帯に吸い込まれていく。 ……。 「だからね?女ってのはさぁ、“シチュエーション”というのが大事なんですよ」 「えっと何?シチュー?」 さっきの大声の衝撃から、鼓膜が回復していないらしい。 しきりに右耳を触りながら、彼は聞き返した。 「違います。 相手に、『キャー、この人ス・テ・キ。チューされたいわ』 などと思わせるような雰囲気に、自分からもってかなきゃダメってことなんです」 「なんだそれは」 「はあ……(ったく)、 あのですね。 要は、良いとこ見せろってこと。 綺麗な景色を見せて、ロマンチックな言葉をかけるとか、豪華ディナーにさそうとか。 『ああこの人、私の事を大事にしてくれそう』と思わせる事です」 「面倒臭……」 「黙らっしゃい! だから失敗したんでしょうが」 「ぐっ…そ、そうか。 しかし…どうやってその、相手のオッケーサインを見分けるんだ?」
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