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次の日。
1課のオニ、土居係長は、今年初めて休暇を取った。
ってなわけで、向こうのシマの係員は大喜び、文字通りオニの居ぬ間にと、ノビノビ雑談している。
私の机には『ゴメン』と一言だけふせん紙メモを張り付けた、コンビニ袋が置いてあった。
昼休憩。
袋の中のサンドイッチとオニギリ2コ(炭水化物多くない?)を食べ終えた私は、久しぶりの日課を楽しんでいた。
「で……君ら付き合ってるわけ?」
パチン。
黒い碁石が盤上に置かれる。
対局するはウチの村澤課長、絵にかいたような退職前のオジサマだ。
「あー……ええまあ」
“仮” がつくけどな。
途端に、部屋に残っていた1、2課の連中が、私達の周りに集ってきた。
目下彼らの一番の関心事項、だが土井の前では怖くて聞けぬ。
今日が絶好のチャンスという訳だ。
「そうそう、それそれ。それですよ~。
町田さん、もー、あちこちスゴい噂。
結局のところ、どうなんです?あの土居係長と、どうして?どうやって?」
一番槍は当然とばかりにアフター5に命を懸ける2課のフジサワさん、私の席の斜向かいにいる女の子だ。
「…い、イヤね。友達の友達の紹介で偶然ってか…でもまだ、お試し期間ってことで~…」
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