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歯切れの悪い私に、今度は1課の男の子が迫る。土井さんの部下の三橋君だ。
「いっやぁ、んな事ないでしょ。
見たし。昨日、中庭でメッチャいちゃいちゃしてたの」
「ゲッ…そんな…み、見えてた?」
「へへ~、丁度ココの窓からこの角度で、スポット的に見えるのさ」
彼は、中庭に面した窓側に屈んで見せた。
サイアクだ。
昨日のがまさか見られていたとは…
場所変えよう。
「俺としては、どんどんヤってくれちゃったらいいと思うんだけどな~。
これでもし、あの土居さんがちょっとでも優しくなってくれたら、儲けもんだし」
いや、ナイナイ…
頭の上に二本指でツノを作ってみせる三橋に、周りの皆が諦めのため息を吐く。
「良くないわっ!
万が一優しい土居さんなら、私だって狙うしっ」
フジサワちゃんだけが、ムキになって反撃した。
むう…
何だか気恥ずかしくなってしまい、俯いてしまった私を見て、課長が止めに入ってくれた。
「ホラホラ、もう止め。
君らがギャーギャー言うから町田ちゃんが困ってるじゃないか。
さあ、行った行った。勝負の邪魔!」
皆が面白くもなさそうにゾロゾロ引き上げてゆく。
…そうだ!
私はふと思い立ち、席に戻りかけていた三橋君を呼び止めた。
「あの…!
そう言えば係長…サン、今日はどうしたのかな?」
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