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振り返った三橋君は、ニヤッと嬉しそう笑った。
「ああ。土井さん?
病欠だよ。
ここんとこ深夜まで残業でさ。昨日も熱っぽい顔して、調子悪そうだったしな~。
心配だったら帰り寄ったげたら?」
「あ、そか。…ありがとう」
そっか。
忙しかったんだ。
私ってば、そのうえ弁当まで作らせて…
ちょっと悪かったかな…
「…町田?おい、町田ちゃん!」
「ふぇ?」
「ふぇ、じゃない。おまえの番」
爪楊枝をかみながら、課長が気だるそうに盤を指した。
「あー、ハイハイっ」
白い碁石を、ポチっと適当な箇所に置く。
黒の碁石を指に挟んだ課長は、盤上を睨みながら呟いた。
「…俺りゃあ、良いと思うがね」
「え、この手?」
「イヤお前が……ひと月前より随分と明るい顔してるよ。
昼の対戦相手がいないのは困るけどな。
はい、終わり」
「ああっ、チョット待っ…」
その時、ちょうど終了のチャイムがなったので、課長は道具をサッサと集め、ロッカーに納めに行ってしまった。
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