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さて。
課題デート、当日。
終業を告げるチャイムが流れ、ついクセでさっさと帰ろうとした私は、カバンを持ったところで彼にひっ捕らえられた。
「じゃ、行こうか、町田さん」
あ~~れ~~
フロアの皆がマジマジと見守る中、私は引き摺られるように会社を後にした。
「企画ってのは、難しいもんだな」
「え」
今回のデートのことを言っているようだ。手を繋いでキッチリ車道側を歩く彼が、眉間にシワを寄せている。
「考えすぎて熱が出た」
「あー…」
なーるほど。
こないだの休みは知恵熱だったってわけか。
『疲れてるのに悪かったね』
なんて、本当は謝りたいんだけど、つまらないプライドがそれを許さない。
意に反して口を突いて出たのは、可愛くもない憎まれ口だった。
「そうですよー、生み出す側はタイヘンなんです。
だからアナタね、むやみに他所さまの予算をポンポン落とすのは…」
「それとこれとは話が別」
「あ、そーですか、そーですか」
きっぱり言い切るヤツを見て、やっぱり謝らなくて良かったと思っていると、
「まあでも、言葉くらいは気を付けようかな…とは思った」
案外素直な顔で言う。
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