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何だ…
カワイイとこあんじゃない。
「セイチョウしてるじゃないですか」
嬉しくなってポンポンと肩を叩くと、彼はほんのり頬を染めた。
「ウルセエよ生意気な…
さ、着いた。そこだ」
彼が指差したのは、小さな日本料理屋さん。
引き戸を引いた彼に続き暖簾を潜ると、
「いらっしゃい」
威勢の良い声が出迎えてくれる。
中も小綺麗で価格設定も手頃、初めて彼女を連れていくデートの選択としては悪くはない。
初めて晩飯奢って貰った時の『ワタシはフードファイターか!』とツッコんだ、『やたら量が多い店』のチョイスを思えば及第点だ。
まあ、食ったけどね。
取り敢えずビールと料理を注文し、お店の人が行ってしまうと、小さな個室は深閑としてしまった。
基本的に彼は寡黙だ。
そうなると、案外お気遣いさんな私、沈黙が苦手でついついイロイロと話し掛けるのが常。
しかし今回は特別だった。
いつもと雰囲気が違う為か、なぜだかひどく畏まってしまった。
手持ち無沙汰に少し斜めの明り窓に目を遣る彼を、まじまじと見つめる……
奥二重の目は均整がとれ、睫毛なんか私よりも長そうだ。
ビューラーはさぞ掴みやすかろう。
大儀そうにかき上げた髪が、ハラリと額に落ちると妙に色っぽくて、ついゾクッとしてしまう。
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