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1課と2課
「バカか!
こんなスカスカの資料で、上に説明なんてできるかっ」
ド~ン!
私の目の前をヒラリとプリント用紙が舞う。
私のデスクの目の前で繰り広げられる日課、『打合せ机ドン!』だ。
…よくやるよ。
うちのシマの係長も、別段驚く風もなく眠そうにパソコンを叩いている。
近頃では、この小劇場を見ることが、閑人の私の数少ない刺激となっている。
と、私の視線を感じたのか、件の彼がチラリとこちらを睨んだので、私は慌ててパソコン画面に顔を隠した。
彼の名は、経理1課予算係長、土井馨。
社の予算を統括する、花形部署の名物オトコだ。
その厳しい追求で甘い企画を次々落とし、泣かされた男は数知れず。
例えそれがいい企画でも、まず1回で通すコトはないという。
黙っていればいい男なのになあ…
惜しい。
実に、惜しい。
あれだけの甘いマスクをお持ちで、浮いた噂一つ聞かないのは、あのイターイ、コワーイ雰囲気の所以。
ハッキリ言って、ハレモノ扱いだ。
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