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lesson3 キスのタイミング
「食堂は使えないとなると…
外に出てる時間はねぇし、毎日コンビニって訳にもいかねえし。
うーん、…困った」
5オフィスに戻る道すがら、土井さんは腕を組んで唸っている。
「…ね、土井さん、もういいよ。
悪いけど私、やっぱりもう…」
「だから。
それは俺が困るって言ってるんだ。
えっと…退社時間は合わないから(土井10時、征子5時)、
会えるのはこの昼休憩と休日くらいしかねえし………
そうだ!俺、作ってくるよ。
2人分の弁当を」
パアッと顔を輝かせた彼に、私は胡乱な目を向けた。
「げっ、手作り弁当ってアンタ……
…食えるんです?それ…」
一瞬頭に、【定食】↘【ダークマター】という構図が過る。
「バカ言え!俺の自炊歴舐めんなよ。
結構あれだ、その…上手い…から」
微妙な歯切れの悪さが気になるんだが…
「…まあ良いでしょう」
共稼ぎフーフの多い昨今では、料理が出来る男はポイントが高いと聞く。
…ということはだ。
メシのクォリティはさておき、彼がリッパなモテ男になる修行にはなるってことだ。
そんなことを考えて、私はそれを承諾した。
ま、その分、月イチの夕飯を豪華にしてもらおっと。
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